このシリーズでは、平成11年5月22日より6月20日まで開催した
特別展「白河を駆け抜けた作家たち」で展示した作品を紹介しています。


甲州猿橋之眺望』江戸時代後期/絹本油彩37.0cm×67.0cm
府中市美術館開設準備室蔵

−亜欧堂田善−(1748〜1822)
 やや灰色がかった空、豊かな緑をたたえる木々、中央には奇妙なアーチ形の石橋 (実際は木橋)、その下には深々とした川面、旅姿の点景人物。 にぶい光沢と濃厚な色合いがとても印象的な作品
です。甲州猿橋といえば現在も山梨 県大月市にあって、古くから甲州街道の名所として知られてい
ます。
 司馬江漢と並んで著名な江戸時代の洋風画家、亜欧堂田善の油彩画作品です。 田善は須賀川の染め物屋に生まれ、47歳(寛政6年・1794)の時に幕府老中退任直 後の白河藩主松平定信にその画才を見いだされ、江戸へ出て銅版画や西洋画法を 修めた画人です。
 田善は49歳の時、白河城下の会津町に屋敷を拝領して須賀川から移り住んでいます。 2年後には、江戸の白河藩邸に出府していますが、記録上ではその後も最低2回ほど 白河に帰郷しています。享和2年・55歳の時、白河城下の総鎮守鹿島神社に「佃島 から品川遠望図」(焼失)の絵馬を奉納しています。
 日本の油絵の歴史は江戸時代に始まりますが、当時の油絵制作は唐辛子やごま油を煮込んで画人が自分自身で絵の具を作るところから始まりました。ここに描かれて いるのは、実景と比較して決してリアルな風景画ではありませんが油絵の具の不透 明でねっとりとした感覚が大変新鮮なものにも見えてきます。
        歴史民俗資料館学芸員 佐川庄司

back
シリーズ目次へ