このシリーズでは、平成11年5月22日より6月20日まで開催した
特別展「白河を駆け抜けた作家たち」で展示した作品を紹介しています。

高橋由一『宮城県庁門前図』
〜高橋由一(1828〜1894)〜『宮城県庁門前図』
明治14年(1881)油彩・キャンパス
61.0センチ×121.5センチ 宮城県美術館蔵

文政11年(1828)佐野藩士の子として江戸藩邸
に生まれた高橋由一は、日本の近代絵画の先駆者とし
て幕末から明治時代に活躍した洋画家で、その独特な
画面構成と写実的な表現方法は評価が高く、「鮭図」
「花魁図」(ともに東京芸術大学蔵)は、重要文化財
に指定されています。由一のその写実的な表現力は、
記録画として最適なものであったため、依頼を受け
多くの記録画を残しています。明治17年(1884)
には、福島・栃木両県の県令で「土木県令」とも称さ
れた三島道庸の依頼により、栃木・福島・山形で三島
の行った道路や建築など新事業を写生しています。
このため同年11月に由一は、泉崎村(太田川)・
白河町(小田川・女石)・西郷村(小田倉)の切り通
しの新道風景を描くため白河を訪れ、滞在しています。
この絵もまた、「松島図」「松島五大堂」(ともに
宮城県美術館蔵)とともに宮城県令松平正直の依頼で
描かれた記録画で、当時宮城県庁として使用されて
いた旧仙台藩の学問所「養賢堂」の講堂とその門前風
景を描いたものです。このころの由一の風景画は、そ
れまでの作品に多く見られる名所絵的構図を引き継い
だ風景画とは別の完成度の高い作品として評されてい
ます。由一の写真のような明治写実主義は、技術的解
明にとどまり、美学の裏付けを持つに至らなかったと
もいわれていますが、その功績は、江戸洋風画から近
代洋画への橋渡しという、日本美術史上、重要な役割
を担ったものといえます。

歴史民俗資料館学芸員 加藤純子

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