シリーズ6

−『江戸深川海荘(はまやしき)図写』−

江戸深川海荘図写
原画 岡本茲奘(しそう)
(天保年間)
77.2cm×71.5cm
国立国会図書館蔵
 海荘は、松月斎(しょうげつさい)庭園とも呼ばれ、江戸深川の入船町(現東京都江東区)に文化13年(1816)に設けられた別荘で、定信の造営にかかる庭園としては最後に築庭されたものです。規模は1千坪と広い敷地ではありませんでしたが、江戸湾を庭の池に見立て、富士山や羽田・品川沖から房総方面までも眺望できる庭園でした。海岸に鴨(かも)池を造り、塩田も設けられ、塩の生産も行われていました。

 定信は、この海荘に普賢象(ふげんぞう)という極めて遅咲きの桜を植栽し、世の桜が落花するころに、この荘が花盛りを迎えるようにし、築地の浴恩園(よくおんえん)から江戸湾を舟で海荘で最後の花見を楽しみました。

 定信が作庭した5つの庭園は、二つとして同じ趣向のものはありませんが、作為的なものを否定し、自然地形や環境に逆らわない庭造り、「野に学ぶ」という庭園思想が貫かれています。

        教育委員会文化課学芸員 佐川庄司

 


       
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