シリーズ10

−『 白河楽翁(らくおう)公居館三郭四園(さんかくしえん)図巻』(模本)− 明治19年(1886)ごろ
縦32.0cm×482.9cm
国立国会図書館蔵

「惜月亭眺望図」

「太清沼と偃盖松図」

 本作品は、松平定信が白河藩絵師大野文泉(ぶんせん・巨野泉祐)に命じて、白河城内三の丸に所在した庭園「三郭四園(さんかくしえん)」の景観を、寛政(かんせい)年間(1789〜1800)に描かせた真景図巻を明治期に模写したものです。三郭四園内の「東園」「南園」「西園」を様々な角度から描いた真景図6場面がはり込まれています。ばく布や流水、東屋(あずまや)や茶亭などとともに様々な樹木なども描かれています。

掲出の「惜月亭(さんげつてい)眺望図」は、三郭四園の「東園」の東端の茶亭「惜月亭」から西側を眺望した景観が描かれています。中央奥には「甲子山」と注記された那須連山が見え、その下側には「西園」「南園」「東園」の景観が東西に広がっています。
 右図の「太清沼(たいせいしょう)と偃盖松(えんがいしょう)図」には、「南園」の泉水である太清沼の南岸景観が描かれています。画面左側から流水「松濤泉(しょとうせん)」が「太清沼」に注ぎ込み、沼には将軍家斉(いえなり)から定信が拝領した白蓮が一面に咲き、右側の岸には園内を周遊するための葦(あし)舟がつながれています。

朱塗りの社の右手には定信の祖父定賢(さだよし)が愛玩したという松「偃盖松」と磁器製の鹿が置かれ、その奥には松林、飛び石が敷かれた小径「龍鱗径(りゅうりんけい)」、右側には茶亭「有斐亭(ゆうひてい)」が竹林の奥にわずかに見えています。 定信が南湖とともに白河に造営した「三郭四園」は現存していませんが、本作品は幻の名園の詳細な姿を今に伝える貴重な絵画作品です。


教育委員会文化課学芸員 佐川庄司        


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